フラボノイド骨格のバイオイソスター設計、ER陽性乳がん向け新規アロマターゼ阻害剤を開発
- アロマターゼ(CYP19A1)はアンドロゲンをエストロゲンに変換する最終段階を触媒する酵素で、その活性がER陽性(エストロゲン受容体陽性)乳がんの腫瘍増殖を支えており、長年ホルモン療法の標的とされてきた。
- 既存のステロイド型・非ステロイド型アロマターゼ阻害剤(AI)は第一選択薬として有効だが、耐性の出現や副作用などの限界があり、新たな化学構造の探索が求められている。
- 研究チームは、既存の阻害剤とは構造的に異なる植物由来のフラボノイド骨格に対してバイオイソスター(生物学的等価体)置換戦略を適用し、新規候補化合物シリーズを設計した。
- 各置換について、CYP19A1活性部位への予測結合様式への影響と、物性・ADME(吸収・分布・代謝・排泄)関連特性への影響を計算的に評価した。
- 最終目標は、エストラジオール生合成を抑制しつつ、既存の化学構造が抱える弱点を改善したリード化合物シリーズの創出である。
💡 ポイント
フラボノイド骨格を出発点に選ぶとは大胆だ——トリアゾール系非ステロイド性AI(レトロゾール、アナストロゾール)やステロイド性のエキセメスタンとは構造的にかけ離れており、その新規性は諸刃の剣でもある。まず気になるのは、実際に何がヘム鉄に配位しているのかという点だ。非ステロイド性AIが効くのはトリアゾール/イミダゾール窒素がFe3+をキレートするからで、バイオイソスター置換で同等の配位基を組み込んでいないなら、「結合改善」という予測はそもそも間違った相互作用をモデル化している可能性がある。次に、フラボノイドはグルクロン酸化や溶解度の低さ、CYP阻害の非選択性(CYP19A1だけでなくアイソフォーム選択性こそAI最大の課題)で悪名高く、バイオイソスター置換はADME上の問題を解決するどころか単に移し替えているだけかもしれない。しかも今回はドッキングと物性予測止まりで、IC50もCYP19A1/CYP3A4の選択性比も細胞データもない。骨格アイデアとしては面白いが、実測Kiが出るまでは「注目はするが追いかけない」案件だ。