メルクKGaA、ポステラ社の経口不妊治療薬プログラムを買収
- 独メルクKGaAは、不妊治療事業を担う子会社EMD Seronoを通じて、ポステラ(PostEra)が開発した経口低分子不妊治療薬の2つの候補プログラムを買収することで合意した。買収額は非公開だが「数千万ドル台半ば」規模とされる。
- 両プログラムはいずれも経口投与可能な低分子化合物であり、現在の不妊治療で主流となっている注射用生物製剤からの転換を示すものとなる可能性がある。
- 一方のプログラムは、体外受精(IVF)における卵巣刺激を目的とした卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)アゴニストである。
- もう一方は、男性不妊症の治療およびIVFにおける排卵誘発を目的とした黄体形成ホルモン/絨毛性ゴナドトロピン受容体(LHCGR)アゴニストである。
- ポステラはAIを活用した薬剤設計プラットフォームを持つスタートアップで、2025年にC&ENの「注目すべきスタートアップ10社」に選出されている。
💡 ポイント
今回はボルトオン買収であり、新市場参入ではない——EMDセローノは不妊治療の商業市場で既にトップ3のプレーヤーであり、既存フランチャイズの強化という低リスクなポートフォリオ戦略と見るべきだろう。注目すべきは経口 vs 注射という構図だ。IVFの排卵刺激は何十年も注射用バイオ医薬品が支配してきた領域であり、信頼できる経口FSHR/LHCGRアゴニストが実現すれば、注射の負担を避けて治療をためらってきた患者層まで対象を広げる、本物の利便性革命となり得る。買収額の「中間から高めの二桁百万ドル」という規模は、前臨床/初期段階の2プログラムとしては小さく、プラットフォーム実証段階の典型的な低リスク投資であり、変革的な買収ではない。そしてPostEraにとっては、プラットフォームではなく創出した資産そのものを買われた点が意味深い——AI創薬スタートアップの近い将来の価値は、ソフトウェアよりも資産にあるという議論への一つの証左だ。