二環ペプチドライブラリーから、難攻不落の受容体Siglec-7を狙う初の非糖鎖型阻害剤が誕生
- ファージディスプレイペプチドを化学的に二つの環へと固定した「二環式遺伝子コード化ライブラリー(BiGEL)」を用いて、小分子での阻害が極めて難しいとされる糖鎖結合型免疫受容体Siglec-7の阻害剤探索が行われた。
- Siglec-7に対するパニングを次世代シーケンシングで解析して数百の候補配列を抽出し、その一部を表面プラズモン共鳴で結合を確認、競合ELISAでSiglec-7とGD3の相互作用を阻害する機能を持つことを検証した。機械学習モデルも配列データから同等の活性を持つ追加の阻害剤を見いだした。
- 構造活性相関の検討から、配列だけでなく二環構造そのものが活性発現に不可欠であることが判明し、NMR解析では最適化リードの一つが糖鎖結合の主要ドメインとは別の部位に結合していることが示され、アロステリックな作用機序が示唆された。
- 細胞を用いた多価結合アッセイではSiglec-7への結合が確認された一方、受容体を持たない細胞への非特異的な結合も顕著にみられ、今後の選択性改善が課題として残された。
💡 ポイント
何より面白いのはアロステリック部位のほうだ——二環ペプチドが、誰もが糖鎖認識ドメインしか狙えないと思い込んでいた標的に対して、正規の糖鎖結合ポケットとは別の場所に結合している。これはSiglec-7にとって本当にワクワクする話で、シアル酸と直接競合する従来のアプローチとはまったく違うSARの方向性が開ける。ただ、細胞アッセイで見られた非特異的結合は、特定のリードに肩入れする前にきちんと解決してほしい点だ。多価性による見かけのアビディティが、実は平凡なコア親和性を覆い隠している可能性があり、それは後工程でプログラムを潰しかねない典型的なアーティファクトだ。二環ペプチドという化学クラス自体には賭ける価値がある——合成しやすく、反復的なSARに耐えうる化学的安定性を持ち、DEL由来の低分子のように平坦で浅いトポロジーに苦しめられることもない。